一言でいうと、蓼科というキャンバスに小津の秋というストーリー、映像を貼った絵画という感じ。人の愛憎でちょっとアクセントをつけているといった感じ。個人的にはもう少し人の愛憎について掘り下げて欲しい気がしたが、さらりと描くのが、小津の秋、ということなのか。
夫々のカットはビーナスライン、および蓼科周辺の道路からのものが多い気がした。無芸荘は小津安二郎の山荘でプール平のビーナスライン沿いに5、6年前に移築された。私は観光名所を故意に作った感じがする。元にあった所を整備して観光名所としたほうが、小津安二郎の陶薫がつたわってくるのではないだろうか。私はいつも横目にみながら、通り過ぎている。
また主人公はアートランドホテルに滞在している観光客で、悪く言えば、絵葉書のような、蓼科の観光映画みたいな気がしないでもない。ただホテルのレストランでコーヒーを飲んでるシーンは、蓼科に行きはじめた頃、まったく同じ席で父、母と私の三人でコーヒーを飲んだのを想いだし、懐かしかった。
同じ蓼科を舞台にした午後の遺言状は、主人公(杉村春子)は昭和の匂いがする山荘に避暑に来ているので、蓼科は老女優の山荘生活の場という感じがした。
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